rooms (短歌30首)

2025-09-03 - Tags: tanka

玄関の三体のぬいぐるみには名前がなくていいと思った

荷物が届くまでやることがない朝のテレビを見れば桜の見頃

失恋について歌った曲を聞きながら右手を洗う左手

読まなかった本を返しに行かないといけない明日の天気を見てる

リビングが汚くなれば卒展のリーフレットを捨てることから

停電は数秒くらいだったのですぐに忘れるような気がする

好きだった漫画が五巻まで読める夏のはじめの今なら無料で

浴室の電球変えた後のそのあたらしいあかるさがこわいよ

冷房が二十四度にする部屋で組み立てる新古品の机

仕方ないことがファミマの生姜焼きだからたくさんあるけど食べる

スイミングスクールがこのへんにあるんだとビラを見て思って捨てた

演劇をやってたころの台本が出てきて同じところに入れる

サザエさんはチョキの描かれた棒を出し自分はチョキを心で出した

熱っぽいけど熱はない日に聞いたことあるポッドキャストをかける

ストリートビューで花屋の前通り過ぎてぽちぽち母校へ向かう

栞紐外した前のページから読んだらそこは病室だった

勢いで買ったエレキを売るためにベッドにのせてきれいに撮った

資格でも取るかと思う十月の十日とおかにちょうどみりんが切れた

わけもないのにさみしくてキッチンの消臭剤のすずしい匂い

昨日から秋が終わっていてそこに置きっぱなしのお水のコップ

暇だからいつもトイレに置いてある本をリビングまで持ってきた

コーヒーを作る機械を部屋に置くのを考えてからやめておく

怒ってるわけではないが暖房のリコールを呼びかけてるテレビ

来週の今頃は空港にいて明日あすの今頃浴槽にいる

動画を観終わって皿をキッチンへ運んで洗うのは後にする

携帯をなくした部屋のいろいろなものに触れつつ午後は十時に

睡眠用BGMの音量を下げて眠さを上げようとした

まだ眠くないから見てる携帯の中の水槽からの脱出

春服と書かれてあった段ボールには春服があると信じて

玄関に鍵を置くためだけにある白いトレイに鍵がなかった

rooms (短歌30首)