rooms (短歌30首)
玄関の三体のぬいぐるみには名前がなくていいと思った
荷物が届くまでやることがない朝のテレビを見れば桜の見頃
失恋について歌った曲を聞きながら右手を洗う左手
読まなかった本を返しに行かないといけない明日の天気を見てる
リビングが汚くなれば卒展のリーフレットを捨てることから
停電は数秒くらいだったのですぐに忘れるような気がする
好きだった漫画が五巻まで読める夏のはじめの今なら無料で
浴室の電球変えた後のそのあたらしいあかるさがこわいよ
冷房が二十四度にする部屋で組み立てる新古品の机
仕方ないことがファミマの生姜焼きだからたくさんあるけど食べる
スイミングスクールがこの辺にあるんだとビラを見て思って捨てた
演劇をやってたころの台本が出てきて同じところに入れる
サザエさんはチョキの描かれた棒を出し自分はチョキを心で出した
熱っぽいけど熱はない日に聞いたことあるポッドキャストをかける
ストリートビューで花屋の前通り過ぎてぽちぽち母校へ向かう
栞紐外した前のページから読んだらそこは病室だった
勢いで買ったエレキを売るためにベッドにのせてきれいに撮った
資格でも取るかと思う十月の十日にちょうどみりんが切れた
わけもないのにさみしくてキッチンの消臭剤のすずしい匂い
昨日から秋が終わっていてそこに置きっぱなしのお水のコップ
暇だからいつもトイレに置いてある本をリビングまで持ってきた
コーヒーを作る機械を部屋に置くのを考えてからやめておく
怒ってるわけではないが暖房のリコールを呼びかけてるテレビ
来週の今頃は空港にいて明日の今頃浴槽にいる
動画を観終わって皿をキッチンへ運んで洗うのは後にする
携帯をなくした部屋のいろいろなものに触れつつ午後は十時に
睡眠用BGMの音量を下げて眠さを上げようとした
まだ眠くないから見てる携帯の中の水槽からの脱出
春服と書かれてあった段ボールには春服があると信じて
玄関に鍵を置くためだけにある白いトレイに鍵がなかった